私的マーケットプレイス研究所

マーケットプレイスビジネスについて学んだことを書き留める。

SaaS×マーケットプレイスのハイブリッドモデルのメリット

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SaaS×マーケットプレイスのハイブリッドの魅力

色々調べてみた上で最大の魅力としては、鶏と卵の問題を解決、ないしは回避した上でマーケットプレイスを始めることができること。

いきなりマーケットプレイスを始めたとしても、

と、そもそもマーケットプレイスを回すことすら難しい。

そこで、最初はSaaSによりシングルプレイヤーモード(スタンドアローンモード)で、買い手または売り手に「独立的な価値提供」を行い、どちらかを十分に囲い込む。その上で、もう片方を集めることで、マーケットプレイスが回るという考え方。

また、マーケットプレイスは特性上winner takes allのため、収益が上がるまで時間がかかる。一方SaaSは月額のサブスクリプションモデルである場合、毎月収益を上げることができるため、安定性が高い。

そういった意味で、「マーケットプレイスを立ち上げる」と言った時には、いきなりマーケットプレイスを始めるのではなく、SaaSによるスタンドアローンな価値提供から入った方が良いのではないか。

 

SaaSから始め、マーケットプレイスに転換したプロダクト

実際にSaaSから入り、マーケットプレイスに転換した企業を調査してみた。あまり上手く見つけることができなかった。

 

OpenTable

OpenTableはレストランと食事をしたい人を結びつけるマーケットプレイス。Opentableは最初、レストランに対して接客用ソフトウェアを提供し、その後にマーケットプレイスへ転換したとのこと。

 

zenefits

zenefitsは元々はHRテック領域として給与計算・労務管理などの人材管理サービスを企業に提供していた。その後、導入企業と保険会社を結びつけるマーケットプレイスを展開。(アメリカの場合、健康保険は保険会社から購入を行う仕組みで、その仲介役としてzenefitsがポジションを取った)

 

Facebook

マーケットプレイスではないし、SaaSでは無いが。

最初はハーバード大学限定で始めたことは有名な話で、もっと初期段階では「ハーバード大学の生徒名簿」を作り、ハーバード大学生に対して「どんな誰がいるのだろうか」ということが分かるスタンドアローンな価値提供を行なった。

 

いきなりマーケットプレイスから始めたメルカリ

とは言いつつも、メルカリなどはいきなりマーケットプレイスから始めて、1年間で

  • 月間流通額:10億円
  • アプリDL:350万DL

までいっているので、上手く行っており、理由としては、

  • ニッチな市場で始める
  • 売り手と買い手のオーバーラップ

である気がしている。

 

ニッチに始める

ニッチな市場で始めることで、競合は少なくなるので、勝率が上がる。そして、その結果としてニッチな市場で獲得したユーザーを起点に市場を展開していくという構図だろうか。(「展開」と簡単に行ったが、それもまた非常に難しいんだと思う…)

メルカリ・小泉氏のインタビューによると

基本的な考え方は「誰でも簡単に利用できるサービス」なのですが、初期のマーケティングの考え方はやっぱり20代女性ですね。これはミクシィの時もある程度同じなのですが、やっぱりトレンドを作るのは若い女性ですよね。ネットサービスをやっているとつい男性にいっちゃいますが。

 

出典:「ヤフオクがあるじゃん」をはねのけたメルカリ 後発ならではの戦い方を小泉氏が振り返る - ログミー

とのことで、「ニッチ」とは言えないものの、「20代女性」というデモグラにまで絞って、口コミを狙っていたとのこと。 

 

売り手と買い手のオーバーラップ

売り手と買い手が行き来すること。つまり、1人のユーザーが売り手にもなれるし、買い手にもなれるということ。役割がオーバーラップするので、例えば、買い手を集めることができれば、その買い手の一部が売り手になってくれる。

メルカリの場合は、「フリーマーケット」なので、特別なものではなく「自分が使っていたもの」つまり、中古品を取引している。したがって、仮に買い手で入ったとしても、中古品は身の回りに溢れているので、売り手に転換するハードルも低いと思われる。

 

鶏と卵の問題解決・回避は必ずしも「SaaS×マーケットプレイス」だけではなく「ニッチに始めて独占すること」や「売り手と買い手をオーバーラップさせること」などがあると分かった。