マーケットプレイスとして【マーケティング】【プロダクト】のバランスが良い「くらしのマーケット」
くらしのマーケットとは
くらしのマーケットは、「役務」を媒介とした、以下のようなマーケットプレイス。
- 出店者:役務を提供するユーザー
- 予約者:役務を受けるユーザー
最近(2018年11月)では、予約者を対象として、以下のようなTVCMを放映中。
今回は、そんなくらしのマーケットについてマーケットプレイスのモデルという観点から調査してみようと思います。
分野的には、以前紹介したCraft Bankと似ています。
工事マーケットプレイス・Craft Bank、クリティカルマスへの到達は「発注UU数」が鍵だと勝手に思う - 私的マーケットプレイス研究所
くらしのマーケットの取引構造
まずは、取引構造を明らかにするところからで、予約者視点では以下の通り。
- 希望するサービスをカテゴリから探す
- カテゴリの一覧画面から最適な予約者を探す
- 予約者のサービスを仮予約する
- 仮予約した上で、出店者と細かな調整を行う
- 調整後、実際に出店者からサービスを受ける
それぞれの取引工程においてユニークな点を取り上げようと思います。
出店者は顔出し・実名登録
何個もカテゴリがありますが、どのカテゴリも顔出し・実名登録で統一がされています。
出店者及び運営者に取ってはコストが高いものの、対面での役務提供を行うマーケットプレイスにおいては、「事前に顔と名前が分かっていること」の安心感は確かに重要なポイントであると思います。
顔と名前が分からず、予約してみて「当日、どんな人来るのだろう…」という心理的不安は予約者にとって大きいので。
また、実現できる背景としては、出店者の多くが完全なCではなく、Small Bであることがあると思います。Small Bであれば、専業に近い形で役務提供を行なっているので、顔や名前を明らかにすること自体に抵抗感は無いものと思われます。
仮に作業者が完全なCであれば、そうも行かないように思われます。
サービスの相場が分かる
各カテゴリで、サービスの相場を公開しています。例えば、お風呂掃除だと以下の通りです。
引用:お風呂(浴室)クリーニング業者を料金と口コミで比較! - くらしのマーケット
確かに、こういった生活領域におけるサービス金額は、作業者にとってはブラックボックスであり、「なんでこの値段なんだろう…」という納得感は得にくいと思います。なので、「相場」という形で金額感がざっくりとでも分かることは安心感に繋がります。
また、相場を運営者が明示することで、出店者のサービス金額を「やんわりと」コントロールすることができるのでは無いでしょうか。
そうすることで、不当に高い/低い金額のサービスを提供者は避けることができ、健全な取引を行うことができます。
くらしのマーケットのマネタイズ
マネタイズは手数料で、以下のように定義されています。
予約手数料:2,000円/件〜(予約成立金額の20%)
お客様が予約申込をおこなったサービスの表示されている料金に対しての20%が手数料として発生します。ただし、表示されている料金に対しての20%が2,000円未満の場合、手数料は一律で2,000円となります。
したがって、テークレートは最低でもGMVの20%以上が確保されているということになります。
続いて、くらしのマーケットの数字周りを見ていきたいと思い、以下のような数値がネットに落ちていました。
- 年間GMVは50億〜60億程度(2018年3月)
- 売上(GMV×テークレート)は1億円超え (2018年3月)
- 出店者は17,000店舗超え(2018年7月)
- 月次でで700店舗は増えている(2018年3月)
参考にしたソースは以下です。
- 年間の流通総額は50億円規模に到達ーーくらしのマーケット躍進、出資や企業買収による拡大も - THE BRIDGE(ザ・ブリッジ)
- 【住まいの注目ベンチャー・インタビュー】みんなのマーケット、生活サービス会社とユーザーをマッチング(インタビュー) :: リフォーム産業新聞
以上から、2018年11月時点の数字を推察すると以下の通りです。
- 月間GMVは5億円程度
- 出品者は20,000店舗程度
そこで、ARPUを出品者の登録店舗数ベースで考えてみると、25,000円(5億円÷20,000店舗)になりそうです。
より実態を捉えて考えるのであれば、分母は「登録店舗数ベース」ではなく、「ログインUUベース」または「成約UUベース」で考えた方が良いので、実態的なARPUはもっと高いものであると考えられます。
最初は出店者集めから
初期の課題である流動性の確保に向けては、出店者から集客を行なったみたいです。
――立ち上げ直後はやはり大変だったのでしょうか?
最初は全くテナントが入っていないショッピングモール状態だったので、お客さんも来ませんでした。最初の3年間は地道に電話営業をしながら1店舗ずつ事業者数を増やしていました。皆、期待も特にしていない、といった状態でした。
出典:【住まいの注目ベンチャー・インタビュー】みんなのマーケット、生活サービス会社とユーザーをマッチング(インタビュー) :: リフォーム産業新聞
確かに、「お風呂掃除」「エアコン掃除」などは、既存産業が既に成り立っており、予約者自体の需要は明確にそこにあることが分かっていた、という判断でしょうか。
また、出店者の属性的にITに明るいわけでは無いため、そのようなIT周りのサポートも手厚く行なっているなど、かなり粘り強く取り組んでいる印象です。
また、予約者に関しては、冒頭で紹介したようなTVCM、そしてプロダクトを見ていると分かる通り、SEO対策がかなり入念に行われており、オーガニックでも集客できているように思われます。
GMVや出店者の伸びの状況を見るに、直接的ネットワーク効果が効き始めていると思われ、TVCMで一気に予約者を増やすことで、より盤石に。
マーケティング・プロダクトのバランスが良い
以上、くらしのマーケットについて調査してみましたが、マーケティング・プロダクトのバランスがかなり良いように思われます。
今後、より高みを目指すにあたっては、強いて挙げるとしたら、課題は以下のようなものでしょうか。
- 間接的ネットワークを引き起こす
- 一部の出店者にだけ予約者が集まらない分散の仕組み
- 予約者のLTV最大化に向けたクロスセル
個人的にはエアコンクリーニングを依頼してみようと思います。