私的マーケットプレイス研究所

マーケットプレイスビジネスについて学んだことを書き留める。

マーケットプレイスとして【マーケティング】【プロダクト】のバランスが良い「くらしのマーケット」

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くらしのマーケットとは

くらしのマーケットは、「役務」を媒介とした、以下のようなマーケットプレイス

  • 出店者:役務を提供するユーザー
  • 予約者:役務を受けるユーザー

最近(2018年11月)では、予約者を対象として、以下のようなTVCMを放映中。

www.youtube.com

今回は、そんなくらしのマーケットについてマーケットプレイスのモデルという観点から調査してみようと思います。

分野的には、以前紹介したCraft Bankと似ています。

工事マーケットプレイス・Craft Bank、クリティカルマスへの到達は「発注UU数」が鍵だと勝手に思う - 私的マーケットプレイス研究所

 

くらしのマーケットの取引構造

まずは、取引構造を明らかにするところからで、予約者視点では以下の通り。

  1. 希望するサービスをカテゴリから探す
  2. カテゴリの一覧画面から最適な予約者を探す
  3. 予約者のサービスを仮予約する
  4. 仮予約した上で、出店者と細かな調整を行う
  5. 調整後、実際に出店者からサービスを受ける

それぞれの取引工程においてユニークな点を取り上げようと思います。

 

出店者は顔出し・実名登録

何個もカテゴリがありますが、どのカテゴリも顔出し・実名登録で統一がされています。

出店者及び運営者に取ってはコストが高いものの、対面での役務提供を行うマーケットプレイスにおいては、「事前に顔と名前が分かっていること」の安心感は確かに重要なポイントであると思います。

顔と名前が分からず、予約してみて「当日、どんな人来るのだろう…」という心理的不安は予約者にとって大きいので。

また、実現できる背景としては、出店者の多くが完全なCではなく、Small Bであることがあると思います。Small Bであれば、専業に近い形で役務提供を行なっているので、顔や名前を明らかにすること自体に抵抗感は無いものと思われます。

仮に作業者が完全なCであれば、そうも行かないように思われます。

 

サービスの相場が分かる

各カテゴリで、サービスの相場を公開しています。例えば、お風呂掃除だと以下の通りです。

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引用:お風呂(浴室)クリーニング業者を料金と口コミで比較! - くらしのマーケット

 

確かに、こういった生活領域におけるサービス金額は、作業者にとってはブラックボックスであり、「なんでこの値段なんだろう…」という納得感は得にくいと思います。なので、「相場」という形で金額感がざっくりとでも分かることは安心感に繋がります。

また、相場を運営者が明示することで、出店者のサービス金額を「やんわりと」コントロールすることができるのでは無いでしょうか。

そうすることで、不当に高い/低い金額のサービスを提供者は避けることができ、健全な取引を行うことができます。

 

くらしのマーケットのマネタイズ

マネタイズは手数料で、以下のように定義されています。

予約手数料:2,000円/件〜(予約成立金額の20%)

お客様が予約申込をおこなったサービスの表示されている料金に対しての20%が手数料として発生します。ただし、表示されている料金に対しての20%が2,000円未満の場合、手数料は一律で2,000円となります。

 

出典:利用料金はいくらですか? – Support Center

したがって、テークレートは最低でもGMVの20%以上が確保されているということになります。

続いて、くらしのマーケットの数字周りを見ていきたいと思い、以下のような数値がネットに落ちていました。

  • 年間GMVは50億〜60億程度(2018年3月)
  • 売上(GMV×テークレート)は1億円超え (2018年3月)
  • 出店者は17,000店舗超え(2018年7月)
  • 月次でで700店舗は増えている(2018年3月)

 参考にしたソースは以下です。

 以上から、2018年11月時点の数字を推察すると以下の通りです。

  • 月間GMVは5億円程度
  • 出品者は20,000店舗程度

そこで、ARPUを出品者の登録店舗数ベースで考えてみると、25,000円(5億円÷20,000店舗)になりそうです。

より実態を捉えて考えるのであれば、分母は「登録店舗数ベース」ではなく、「ログインUUベース」または「成約UUベース」で考えた方が良いので、実態的なARPUはもっと高いものであると考えられます。

 

最初は出店者集めから

初期の課題である流動性の確保に向けては、出店者から集客を行なったみたいです。

――立ち上げ直後はやはり大変だったのでしょうか?

 最初は全くテナントが入っていないショッピングモール状態だったので、お客さんも来ませんでした。最初の3年間は地道に電話営業をしながら1店舗ずつ事業者数を増やしていました。皆、期待も特にしていない、といった状態でした。

 

出典:【住まいの注目ベンチャー・インタビュー】みんなのマーケット、生活サービス会社とユーザーをマッチング(インタビュー) :: リフォーム産業新聞

確かに、「お風呂掃除」「エアコン掃除」などは、既存産業が既に成り立っており、予約者自体の需要は明確にそこにあることが分かっていた、という判断でしょうか。

また、出店者の属性的にITに明るいわけでは無いため、そのようなIT周りのサポートも手厚く行なっているなど、かなり粘り強く取り組んでいる印象です。

また、予約者に関しては、冒頭で紹介したようなTVCM、そしてプロダクトを見ていると分かる通り、SEO対策がかなり入念に行われており、オーガニックでも集客できているように思われます。

GMVや出店者の伸びの状況を見るに、直接的ネットワーク効果が効き始めていると思われ、TVCMで一気に予約者を増やすことで、より盤石に。

 

マーケティング・プロダクトのバランスが良い

以上、くらしのマーケットについて調査してみましたが、マーケティング・プロダクトのバランスがかなり良いように思われます。

今後、より高みを目指すにあたっては、強いて挙げるとしたら、課題は以下のようなものでしょうか。

  • 間接的ネットワークを引き起こす
  • 一部の出店者にだけ予約者が集まらない分散の仕組み
  • 予約者のLTV最大化に向けたクロスセル

個人的にはエアコンクリーニングを依頼してみようと思います。

マーケットプレイスで効率的なマッチング実現のために、厚み・混雑・信用がキーワード

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マーケットプレイスがにおけるマッチング

マッチングはマーケットプレイスのモデルであると避けることができないテーマ。

「マッチング」と聞くと想起するのは、AさんとBさんが結びつく、みたいなイメージで、その結びつき方もどちらが一方が「嫌だなあ」と思っているわけではなく、お互いが肯定的に捉えて、結びついているのではないかと思う。

したがって、マッチングの肝としては、

  • Aさんが、Bさんを選んでいる
  • だけではなく、BさんもまたAさんを選んでいる
  • つまり、AさんもBさんに選ばれる必要がある

といった具合に、欲求の二重一致(ダブルオプトインが必要であるということ。

そう考えると、お互いがお互いを選び合うというのは、なんだかすごいことだし、ダブルオプトインである以上、互いの「肯定」という取引プロセスがマーケットプレイスのプロダクトには必要であり、その取引プロセスにかかるコストをいかに下げることができるか、がポイントになりそう。

代表例としてはTinderで、このダブルオプトインのプロセスをスワイプという体験であっという間にコストを下げて話題になった。

 

市場の設計=マーケットデザイン

色々参考にしたのはこの本。

Who Gets What(フー・ゲッツ・ホワット) ―マッチメイキングとマーケットデザインの新しい経済学

ノーベル経済学賞受賞者のロス氏が執筆していて、社会の実例を用いてマッチングを科学的に捉えていて面白い。

社会の実例というと、臓器提供、学校選択などで、どれもある意味"市場"として捉えた際に、論点となるのは以下の3つであると読んで感じた。

  • 市場の厚み
  • 市場の混雑
  • 市場の信用

そして、これらの論点を盛り込みながら市場を設計することをマーケットデザインと呼び、市場における効率的なマッチングの実現を意図している。

 

市場の厚みとは

市場の厚みとは、多くの売り手が多くの買い手に、多くの買い手に多くの売り手にアクセスすることができること。 

メルカリを想起するとわかりやすく、メルカリという市場には以下のユーザーが存在している。

  • 自分の中古品を売りたい出品者
  • 安く中古品を買いたい買いて

一般的に、売り手としては、売れる相手(買い手)が多い方が良いし、買い手としては、選択肢(買い手の商品)が多ければ多い方が良い。

もちろん、厚みは量の話だけではなく、質の話もあり、売り手と買い手のアカウントがしっかりと生きている必要がある。

多くの生きているアカウントが存在し、互いが互いにアクセスできる市場を"厚み"があると呼んでいて、これがいわゆる流動性の確保、クリティカルマスへの到達ということだと思う。

 

市場の混雑とは

市場の厚みを獲得した市場がハマりやすいのは、 市場の混雑。

上記で挙げたTinderのようなデーティングアプリはわかりやすい。特に何も設計がされていないと以下のような事象が起きる。

  • 美男美女にメッセージが集まる(混雑)
  • 美男美女は数あるメッセージの中から一部しか返信しない
  • メッセージを送ったその他大勢は無視をされてしまう
  • 無視されたその他大勢はアプリを使わなくなる
  • アプリを使わなくなった結果、その他のマッチング機会を損なう

何を言いたいかというと、本来可能性があったマッチング機会が市場の混雑によって失ってしまってしまうということ。

この混雑の解消を上手く解消したのがUberAirbnbで、スマホが混雑の解消に一役買っている。スマホの効能としては情報の更新性が高いことであり、PCよりも早く情報の更新(メッセージの返信、気になる宿の空き状況、空きタクシーの状況、等)がなされるため、スピードがある。

そのため、混雑の解消の1つとしては取引のスピードを上げることがある。その他の方法としては、ユーザー1人1人に見せる情報を変える、例えばパーソナライズはその一環としてある。

 

市場の信用とは

市場の信用とは、ユーザーから「この市場であれば問題なく取引を行うことができる」と信用してもらうこと。

信用は安全性と信頼性の2つに分解することができる。

安全性は、例えば詐欺に遭遇しない、MLMに巻き込まれないような設計が事務局によってなされていること。

一方で信頼性は、例えば出品されている商品の情報に誤りが無く正確である、情報の精度の高さがあることである。

当たり前のように聞こえるかもしれないが意外と実現することは難しい。信頼性という観点では、市場に信頼性のある情報が蓄積されればされるほど、市場の厚みが増し、その結果適切なマッチングが(情報量が多いので)行われることになる、まさにベースと言っても過言ではない部分。

 

 以上、マーケットデザインについて。特に市場の混雑については非常に難易度が高い。解決するためにはそれぞれの市場に応じた独自の工夫が必要だし、その工夫ができないと、たとえ厚みを獲得したとしても、効率的なマッチングが行われないため、スケールしなくなってしまう。マーケットプレイスにとっては必ず乗り越えるべき壁と言えるのではないか。

パーキングのシェアエコ・akippaは需要過多につき「駐車場数」をいかに増やすかがポイント

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パーキングのマーケットプレイス・akippa

akippaはパーキングのシェアエコ×マーケットプレイスのプロダクト。以下のユーザーからマーケットプレイスは成り立っている。

  • 駐車場を借りたい人
  • 駐車場を貸したい人

借りたい人としてのメリットは「早い」「安い」であり、前者の「早い」という点では、決済はスマホでできること、そして後者の「安い」という点では、駐車場の維持管理費や精算機などの設備費用が低いまたは無いため、駐車料金が低く設定されている。

参考:駐車場予約サービス「akippa」低価格のカラクリ【F17C-AKP #2】 – 【ICC】INDUSTRY CO-CREATION

 

akippaの取引構造

駐車場を借りたい人視点で、取引構造を分解すると以下の通り。

  1. 駐車場を探す
  2. 駐車場を予約する
  3. 駐車場を利用する

体験としてはシンプル。実際に掲出されている駐車場では以下のような情報が画一的に確認をすることができる。

  • 対応車種
  • サイズ
  • 場所
  • 金額
  • 営業時間
  • 特徴(時間制限あり、オンライン決済、再入庫不可、など)

この手のマーケットプレイスであると、供給されるモノ(今回でいうと駐車場)は様々であり、需要者側もどちらかというと能動的に探す姿勢があるので、体験としては可能な限り駐車場情報を細かく明記し、かつその情報でフィルタリングして探すことができるような体験が良さそう。

また、予約・利用の体験において、面倒な決済が事前決済することができるのは、小さい部分ではあるが、取引コストを押し下げている部分であると思われる。

一方、駐車場は必ずしも、分かりやすい場所にあるわけでは無いので、場合によっては駐車場を見つけるまでの取引コストが非常に高くなり、挙げ句の果てには見つけられないといった体験もありえそう。

 

マネタイズは強気の手数料:50%

マネタイズは手数料で貸出料金のうち50%。

貸出料金のうち、50%をオーナーさまへお支払いいたします。
ただし、キャンペーンやサービスの内容によっては変動する場合がございますのでご注意ください。

 

出典:貸出料金のうちどれくらいを報酬として受け取れますか?

印象としては相当手数料取っているな、という印象ではあるが、考えてみたら妥当なのかもしれない。

シェアエコは休眠資産の活用であり、休眠資産と一口に言っても、AirbnbにようなアコモデーションUberのようなタクシー、クラウドソーシングのような役務提供など様々。

その中でも、akippaの「駐車場」という休眠資産は、駐車場を貸したい人が貸す際に必要となる取引コストが低い。したがって、運営側としても手数料は50%という高めの設定をしたのではないか。

例えば、先日上場した世界的なクラウドソーシング大手・upworkが活用している休眠資産は役務提供であり、フリーランサーがその役務を提供している。フリーランサーの役務提供は取引コストが高いため、運営側としてもakippaのような手数料50%という強きの設定はできないのでは無いか。

 

参考:クラウドソーシング最大手の「アップワーク」がIPO(新規株式公開)! 「フリーランスのUber」と呼ばれる注目企業のビジネスモデルや業績を解説!|世界投資へのパスポート|ザイ・オンライン

 

事業変数は供給側の変数・駐車場数にあり

マーケットプレイス型のプロダクトであるので、KGIはGMVで捉えて問題ないと思う。手数料モデルなので、GMVを伸ばしていくことが至上命題。

まず、GMVは、貸出利用数×貸出料金単価に分解することができる。「貸出料金単価」に関しては、そもそもとして既存の駐車場よりも安いことをメリットとして押し出しているので、積極的に伸ばしていくことは難しく、ポイントは貸出数になるのではないか。

次に、貸出利用数は、貸出利用UU数×UUあたり貸出利用数に分解することができる。この2つの変数に関しては、いづれも運営側でコントール可能な変数であり、この2点に関して掘り下げる。

 

UUあたり貸出利用数はどのように伸ばす

UUあたり貸出利用数を噛み砕くと、駐車場を借りたい人が1人あたり何回貸出を利用するか、である。

したがって、リテンションのKPIが絡んできており、ポイントとしては例に漏れず以下ではないか。

  • 初回体験をどのようにさせるか
  • 1回目から2回目の体験をどのようにさせるか

憶測にはなるが、akippaのサービスは1回体験をしてしまうと、その便利さから普通の駐車場にはもう戻れない、といったプロダクトとしての強みがある様に感じる。なぜなら、従来よりも取引コストが圧倒的に低いので。

そのため、いかに初回体験をさせるかが論点であり、この点に関してはUberのようなリファラルキャンペーンや初回体験無料キャンペーンが非常に有効であると思われる。

 

貸出利用UU数をいかに伸ばすか

貸出利用UU数を噛み砕くと、駐車場を借りたい人が貸出利用をする人数、である。貸出利用UU数は新規ユーザーと継続ユーザーに分解することはできる。

継続ユーザーの1ヶ月後、3ヶ月後、半年後のリテンションレートは高そうである。また、新規ユーザーの獲得に関しても、顕在的なニーズであるためSEMは効きそうであり、Webマーケティングでクリティカルマスを集めることができそう。

 

ポイントは駐車場数

駐車場を借りたい人視点でのKPI分解を行ったところ、借りたい人よりも貸したい人を集めることの方が難しそうであるとことに気がした。

したがって、このマーケットプレイスにおいては、流動性の確保のためには駐車場数を担保することが重要であるように思う。

実際にakippaが紹介されている記事には以下のような情報があった。

  • 2018年4月時点で会員数は70万人以上
  • 累積の駐車場拠点数も2万箇所を超えている
  • 特に1年で倍以上になったという拠点数については、個人のものだけでなく大手企業が提供する駐車場が増加傾向
  • コインパーキングやSUUMO月極駐車場を提供するリクルートなど、同業他者との連携も積極的に行ってきた
  • 前回のラウンド(2017年5月)以降はとにかく駐車場を増やすことにフォーカス
  • 需要に対して供給が全く追いついていない状況
  • 供給不足の打開策としてakippaが着手したのが、これまで導入が難しかったゲート式駐車場の開拓
  • ARPU(アープ / ユーザー1人あたりの平均売上高)を増やす1番の方法は駐車場を増やすこと

 

出典:駐車場シェアを超えたモビリティプラットフォーム目指す「akippa」、住商らから8.1億円を調達 | TechCrunch Japan

したがって、GMVの見方としては、貸出利用数×貸出料金単価ではなく、駐車場数×駐車場単価であり、現在は需要過多の状況であるとすると、駐車場数を増やしても駐車場単価は下がるというトレードオフは起きず、駐車場数を増やせば増やす程、GMVが伸び、結果として手数料による粗利も増えていく。

また、駐車場数を増やすための打ち手としてはシェアゲートというテクノロジーであり、かなりワクワクする内容。

その他にもトヨタとの業務提携で、ナビにakippaの駐車場が表示されるなど、かなり本質的なアライアンスも行っている。確かに駐車場数を増やしていけば、GMVも伸びそうであり、今後の成長が非常に楽しみ。