私的マーケットプレイス研究所

マーケットプレイスビジネスについて学んだことを書き留める。

フリーランス美容師と美容院の面貸しマーケットプレイス・MIRRENTAの勝手な考察

f:id:kokkokoou:20180919235746j:plain

美容師への面貸しマーケットプレイス・MIRRENTA

まず、面貸しとは、美容院で空いている席(及び設備)を貸し出すことを業界では面貸しと言う。その面貸しのマーケットプレイスを展開しているのがMIRRENTA。以下のユーザーから成り立っている。

  • 美容師:自分で店舗を構えていないので、カットする場所を貸して欲しい
  • 美容院:席が空いているので見栄え的にも売り上げて的にも空席を無くした

美容師にとってのメリットとしては以下の通り。

  • 自分で店舗を持つ必要がない
  • 自分の好きな時間に働くことができる

一方で、美容院へのメリットとしては以下の通り。

  • 空席を埋めることで売り上げへの寄与
  • 店舗に活気があるように見える

まさに、フリーランス美容師といった様相で、美容師の業界にもシェアリングエコノミーが浸透してきているんだなと感じる。

対象が店舗を持たない美容師となるので、市場規模としてはそこまで大きくないのかもしれないが、面白いので、掘り下げて調べてみる。

 

MIRRENTAの取引構造

まず、取引構造の整理からで、以下の通り。

  1. 美容院または美容師から面貸しのリクエストを送る
  2. 金額などの条件をすり合わせ、契約を取り交す
  3. 美容師が美容院へ行き、カットする
  4. 美容師は利用料、美容院はマッチング料を支払う

利用料やマッチング料に関しては、マネタイズの部分なので後述。

「2.金額などの条件をすり合わせ、契約を取り交す」という取引に必要なコストをいかに下げることができるかがポイントだと感じた。

すり合わせにあたり以下が面倒臭そう。

  • 材料をどこまで使っていいのか
  • 使うにせよ、何がどこに置いてあるのか、誰が教えてくれるのか
  • 店舗にある機材で十分に対応をすることができるのか
  • 金額はどのように折り合いをつけて決めるのか

そう考えると、このマーケットプレイスAirbnb型。つまり扱っているモノ=店舗は画一的ではなく、店舗の雰囲気や立地、提供可能な材料など、オリジナリティがある。

そのため、美容師は可能な限り自分の希望に添う店舗を探したいので、検索性がポイントになってくる。例えば、「貸出可能な材料のフィルタリング」「利用料の割合でフィルタリング」など。現状としては、MIRRENTAでは検索性に関してそこまで注力をしている感じではなさそう。

また、利用料に関しては、店舗ごとに歩合制や月額制など、フォーマットが様々で美容師は混乱をしてしまいそう。 かつ美容院側の取り分も各々が決めている状態。

この点に関しては、価格設定の権利はオリジナリティがあるマーケットプレイスの場合、売り手(今回でいうと美容院)が握っていても良いと思うが、「どのくらいが美容院の取り分とするか」は運営側で定めた方がいいのではないかと思う。(例:制約金額の20%を手数料として事務局に納める等)

 

MIRRENTAは価値を「場」ではなく「出会い自体」に設定

プランと料金に関しては、いくつかあるみたいだけど、このマーケットプレイスというところで中心的なマネタイズとしては、 美容院に対するマッチング費用:20,000円/1件となっている。

一瞬「美容院に対して成果報酬で課金するのか!」と驚いた。多くのマーケットプレイスでは、成約金額のN%を手数料としているところが多いので。その考察を以下で行う。

 

実態としては人材紹介モデルに近い

あくまで想像でしかないが、美容院に対する課金をしている理由は以下ではないか。

  • 上記のように美容院側に価格設定の権利をかなり与えている
  • 美容院側は美容師からの儲けを最大化しようとする
  • 美容院はある程度のまとまった儲けを美容師から得る
  • そのマッチングに対して事務局は美容院へ課金する

以上から、MIRRENTAは価値のポイントを「MIRRENTAという場」ではなく「美容院と美容師の出会自体」に置いているということが分かる。

具体的には、MIRRENTAという場に価値を置いているのであれば、恐らく成約金額のN%といったマネタイズが妥当。しかし、そうではなく出会いに対して価値を置いているので、マッチング費用という形でマネタイズを図っている。ということで驚きが解消された気がする。

したがって、モデルとしては人材紹介に近いかもしれない。マッチングしたらいくらです、といったモデルであるという意味で。

 

ネットワーク効果を引き起こすことは難しそう

確かに、このモデルであれば、マーケットプレイスであるあるな直接取引を避けることができる。美容院と美容師のマーケットプレイスアメリカの家事代行マーケットプレイスとして名を馳せたHomejoyと同じように、売り手と買い手の距離が近いために、直接取引の温床となりやすい。

しかし、マーケットプレイスの最大の旨味でもあるネットワーク効果の可能性が無くなってしまっているのは、もったいないように感じた。

「出会い自体」に価値を置く場合、ユーザー(特に美容師)としては1回出会ってしまったら、サービスに戻ってくる動機や理由が無くなってしまう。そうなると、マーケット(MIRRENTA)に「厚み」は生まれなくなり、常にユーザー(特に美容師)は入れ替わり立ち替わりになる。

もちろん過去の経緯も知らないし、今後の計画も把握はしていないので、分かりかねるが、仮にマーケットプレイスとして機能していくには以下がポイントになりそうだと感じた。

  • 価値を「場」そのものに設定する
  • 売り手(面貸ししてくれる美容院)を集める
  • マネタイズは成約金額のN%を手数料として受け取るようにする
  • 美容師の細かな検索ニーズに応えるために、検索性を抜群にする

 

美容師・美容院の業界でIT的な側面でのインパクトのあるニュースを聞いたことがなかったので、掘り下げて調査してみた。美容院に限らず「空席」は貴重な遊休資産。どの業界でも思考をするにあたって良い観点となりそう。