フードロス解決マーケットプレイス・Reduce GO、クリティカルマス到達のポイントはパワセラーの獲得
Reduce Goとは
フードロス(売れ残った商品を廃棄してしまう環境問題)をテーマに扱っているマーケットプレイスで、以下のユーザーで成り立っている。
- 売り手:売れ残り食品を抱える飲食店
- 買い手:売れ残り食品でも良いから買いたい消費者
2018年4月5日からローンチを始めたみたいで、この記事の執筆時点で大体4ヶ月経ったプロダクトとなっている。
いくつかの記事で、Reduce Goの考察をしている記事があるものの、ここでは「マーケットプレイスとして」という観点で考察をしてみようと思う。
- 食の定額制「Reduce Go」における6つの懸念点 | 食彩life
- 飲食店の料理を1日2回まで月1,980円で食べ放題「Reduce GO」が衝撃。ビジネスモデルを調べたら素晴らしかった
- 廃棄してしまう食品を定額で食べられる「Reduce GO」は面白いけども失敗する理由 | あやらぼ
Reduce Goの取引の流れ
取引の流れとしては、
- 飲食店(売り手)が売れ残り食品を出す
- 消費者(買い手)が食品リストの中から欲しい食品を注文する
- 消費者(買い手)が飲食店(売り手)にまで取りに行く
- マネタイズは消費者(買い手)からで、月額1,980円で、1日2回まで注文可能
という形で、「消費者(買い手)が飲食店(売り手)にまで取りに行く」というのは取引コストが高いが、初期段階では問題ではなさそう。今後の展開としてデリバリーはきっとあるのだと思う。
その中でやはり気になったのはマネタイズの部分で、掘り下げていこうと思う。
Reduce Goのマネタイズ・ビジネスモデルに関して
まず、Reduce Go自体のマネタイズとしては、消費者(買い手)からのサブスクリプションで、月額1,980円。
この1,980円に関しては、丸々Reduco Goの懐に入るわけではなくて、
- 39%:Reduce Go
- 59%:加盟店に均等配分
- 2%:社会活動団体に寄付
となっており、かなりユニークだと思う。
2018年8月23日時点で、公式サイトで以下のような数字(恐らくサービス開始以来の累積値)が公開されている。
- 余剰食品削減数:1,762食
- 寄付予定額:20,135円
- 加盟店数:127店
そこで、簡単な計算をしてみると、
- 予定寄付額20,135円を2%で割り戻して「サブスクリプション売上」:1,006,750円
- サブスクリプション売上に59%を掛けて「加盟店への配分金額」:593,983円
- 配分金額に加盟店数127店を割って「加盟店あたり売上」:4,677円
- 月額1,980円で消費者(買い手)のサブスクリプションが1回だとした場合の「消費者(買い手)数」:508人
- 1人あたりの食品注文数:3.5回
と、計算が一部粗い部分があるが、規模感としてはこんなところではないか。
Reduce Goが流動性を確保するには
マーケットプレイスとしてのReduce Goの現在位置と、今後流動性を確保して行くためにどのようにクリティカルマスへ到達して行くのかを考えてみようと思う。
現状としては需要過多で供給不足
仮に上記の数値感が大きく外れていないのであれば、「1人あたりの食品注文数:3.5回」は「1日2回注文できる」という訴求に対して非常に少ないことが気になっている。
少ない原因としては、
- 初回体験が悪く離脱ユーザーが多いため
- 需要過多で、供給が追いついていないため
とかで、実際にアプリをDLして見てみると、多くの食品は「SOLD」つまり注文がなされていた。したがって、「需要過多」の筋ではないかと思う。したがって、まだまだクリティカルマスへの到達はしていない、という現在位置ではないか。
飲食店(売り手)の確保が喫緊の課題
したがって、今後としては飲食店(売り手)をどのように増やして行くかが喫緊の課題と捉えて間違いはなさそう。実際に以下のように飲食店を募ろうとしている。
- 飲食店様向け | 周辺の余剰食品を月額定額でテイクアウト - Reduce GO[リデュースゴー]
- 食品ロスや食品廃棄コストを削減したい飲食店オーナー様を紹介してください - SHIFFT株式会社 | Saleshub[セールスハブ]
また、募るにあたり魅力として押し出しているポイントは以下の通り。
- 新規顧客(見込み客)の獲得
- 食品廃棄費用の削減と新たな収益源
- 社会貢献によるお店のイメージアップ
1番に関しては、「確かに」と思うし、飲食店に注文を受け取ることもそうだし、注文だけ受け取って帰る人も一定いる一方で、「ついで買い」も確実に発生していると思う。
2番に関しては、食品廃棄費用の削減が、どの程度なのかあまりイメージがつかなかった。しかし、そこに経済合理性があるのであれば、これも有り得る話だと思う。
パワセラーの囲い込みがポイント
押し出しているポイントと「加盟店に均等配分」というモデルを掛け合わせて考えてみると、飲食店のインサイトとしては、
- お店としては「売れ残り食品を売って売上に繋げよう」という動機は薄い
- むしろ、売れ残り食品を捨てることの虚しさや罪悪感が強う
のでないか感じた。
であれば、「加盟店に均等配分」というモデルには納得が行くし、恐らくこれはユーザーインタビュー等で確実に検証済みのはず。
したがって、「飲食店(売り手)を増やすために、加盟店への配分金額を増やす」的な金銭インセンティブによる施策は悪手。
そこで、「著名飲食店(パワーセラー)の参加」がポイントになってくるのではないかと思う。
一見、消費者(買い手)向けの施策にも思えるが、
- 著名飲食店(パワーセラー)の参加
- 消費者(買い手)の動きが活発になる
- 実績ができる
と飲食店(売り手)に対する説得材料となる「実績」ができることが最大のポイントであり、結果的に飲食店(売り手)を増やすことができるのではないかと思う。
そのため、現在は東京23区という範囲でやっているが、もっとニッチにして「渋谷区」まで絞って、その中でまずはやっていくのも良いかもしれないと思った。
消費者(買い手)側のアプリであると、食品の場所や種類のフィルタリングができなかったりしたので「不便だなあ」と思っていたが、明らかに優先順位が飲食店(売り手)なので、納得。
やっぱり社会的課題に向き合って、それを解決しようしている(しかも個人的に好きなマーケットプレイス型で)プロダクトは非常に応援しているし、拙作ながら運営のお役に立てれば嬉しいと思う限り。