福利厚生マーケットプレイス・CXA、導入企業従業員のアクティベートが肝
CXAとはどういったマーケットプレイスなのか
いわゆる純粋なマーケットプレイス(エンドユーザー同士がダイレクトマッチングし、自由取引を行う場所)ではないが、THE BRIDGEの記事(2017年2月13日)を今更ながら読んで面白かったので。
CXAは福利厚生領域のマーケットプレイスで以下のプレイヤーから成り立っている。
- 買い手:企業の従業員
- 売り手:保険・福祉会社
この買い手と売り手を結びつけるマーケットプレイスを提供しているのがCXAで、シンガポールの会社になる。
また、買い手である企業の従業員は「身銭を切って保険・福祉サービスを買う」のではなく、前提として契約自体は従業員が所属する企業が結んでいる。(そういった意味でピュアなマーケットプレイスではない)
CXA Group: Asia’s First Flex & Wellness Marketplace
具体的なサービス内容
YouTubeを発見したので、まずはご覧あれ。
あんまりよく分からなかったので、色々調べてみるとポイントとしては以下みたい。
- 企業に対しては「医療費を福利厚生費に転換させようぜ」的な触れ込み
- 従業員の健康意識を向上させて健康になってもらい、企業の医療費を削減させる
- 従業員は企業から給付を受け、そのお金でマーケットプレイス上にある商品(ジム・マッサージなど)を選ぶことができる
- 加えて、従業員はツール上で自身の健康管理をすることができる
- 一方、企業側は「本当に効果が出ているのか」というROIを観測できる
といった具合だろうか。
実際の成功事例に関しては分からなかったが、「健康促進に関する福利厚生を行い、逆に企業が支払う医療費を下げる」というのは何だか分かる気がする。
ネットワーク効果について
「企業の従業員×保険・福祉会社」という構図で捉えると「ネットワーク効果はある」とは言えなさそう。しかし、「企業×保険・福祉会社」という構図で捉えると、「ネットワーク効果はある」と言えそう。
ネットワーク効果は「ネットワークへの参加者が増えれば増えるほど、その利便性を増す」という性質のものであるが、
- CXAへの参加企業が増えれば増えるほど、参加する保険・福祉会社も増える
- CXAへの参加保険・福祉会社が増えれば増えるほど、参加企業の利便性が高まる
と言えそう。
ここで言う「参加企業の利便性」とは、参加保険・福祉会社が増えれば、企業の従業員が選択できるサービスが増えるので、
- より自分が望むサービスが見つかるようになる
- 企業の従業員がサービスを使うようになる
- その結果として、企業の従業員の健康意識向上、実際に健康になる
- 企業が払う医療費が削減される
ということ。
なので、CXAとしては「いかに多くの企業に導入をしてもらえるか」「いかに導入してもらった企業内の従業員にサービスを使ってもらうか」がポイントとなり、その実績を提げて、保険・福祉会社を増やしていき、利便性を高めるという構図か。
いかに導入してもらった企業内の従業員にサービスを使ってもらうか
ポイントの後者に挙げた「いかに導入してもらった企業内の従業員にサービスを使ってもらうか」は非常に難しそう。
「医療費の削減」はあくまで企業の都合であり、正直なところ従業員に対して「給付費あげるから、サービス使ってよ」と言っても、そんなにアクティブに利用されるイメージが湧かない。「では、どうしているんだろう」と考えると、上記で解説した「企業で従業員が健康管理できるツール」の提供が価値になりそう。
紹介動画では、企業の従業員が喫煙有無・アルコール・睡眠などの項目を入力すると、「N年後の自分の顔」をシミュレーションすることができる。これはかなりショッキングで、モチベートされそう。
「マーケットプレイス」という言葉に惹かれて調べてみたものの、自分が思い描くマーケットプレイスとは少し違った、けど勉強になったのでOK。
「企業都合で導入したサービスをいかに従業員に浸透させるのか」というのは、企業自体の努力も必要である一方、サービス提供側が頑張らなければいけないポイントだと感じた。
労働力のシェアエコ・Taimee(タイミー)、クライアント(仕事)集めが成功の鍵か
労働力のシェアエコ・Taimee(タイミー)とは
資金調達のニュースで話題になった、クライアントとワーカーを結びつけるマーケットプレイス・Taimee(タイミー)。
一番推しているメッセージは「すぐ働けて!すぐお金がもらえる!」ということで、スポットで労働力が欲しいクライアントと、スポットでお金が欲しいワーカーをマッチングするようなサービスになっている。
利用規約をざっと眺めて見ると、
- 雇用形態は業務委託契約
- 18歳未満は会員登録できない
- 報酬の直接渡し/受け取りは厳禁
あたりがポイントでは無かろうか。
まず労働なので何かしらの契約は必要で、それは業務委託契約にて成されているみたい。また、「若い人が取り組みそうだな」と思ったけど、18歳未満は会員登録ができないので、実質的には大学生以上向けのサービスであるということか。あと、報酬の直接渡し/受け取りは厳禁で、ビジネスモデル上、クライアントとワーカーの直接取引は避けたい所。
※恐らく立ち上げ初期なので、まだtitleタグとか挿入されていない。こういった場合、検索エンジンのSerpsではGoogleが良い感じにtitleタグを書き換えて表示させる。Googleすごい。
タイミー(Taimee)のマネタイズは手数料
マーケットプレイスらしく手数料課金で、手数料はクライアントから。具体的には、ワーカーへの日給の30%を手数料として事務局に払う。なので、例えば、日給10,000円であれば、3,000円が手数料なので、合計13,000円がクライアントの払いとなる。
一方で、初期費用・アプローチ費用・月額固定費無料・解約手数料などは一切無いみたい。ちなみに、「アプローチ費用」というのはクライアントからワーカーへのスカウト的な感じだろうか。
クライアント集めが成功の鍵
立ち上げ期のマーケットプレイスでぶつかることとしては、
- 鶏が先か卵が先か
- どのようにニッチに始めて行くのか
がメインどころだと思う。
鶏が先か卵が先か
今回で言うと、クライアント(仕事)があるからワーカーが集まるのか、ワーカーがいるから、クライアント(仕事)が集まるのかで、「クライアント(仕事)集め」から先に着手をすべきでは無いかと思う。
クライアント(仕事)が無い(少ない)マーケットプレイスにワーカーを集めることはできないけど、ワーカーのいない(少ない)マーケットプレイスにクライアント(仕事)を集めることはまだ可能だし、クライアントも掲載課金ではなく、手数料課金なので、仕事を出すだけなら損をしない。
また、サービスサイトを眺めてて気付いたのは、クライアントとワーカーで画面が違うということ。
- ワーカー:仕事探しに特化した体験ができる
- クライアント:「仕事作成」はもちろん「人手探し」もできるような体験
したがって、決してSaasのソフトウェアでは無いけど、所謂シングルプレイヤーモード的な発想で、クライアントに対する価値提供を行なっているのでは無いか。
ここで提供している価値は「人手探し」もっと言うと「スポットで、すぐに働くことができる人を探せること」であり、この価値は確かに提供できている企業は少なそうなイメージ。
勝手な深読みをしているだけかもしれないが、
- クライアント(仕事)から集めることを意思決定
- モデルとして掲載課金ではなく、手数料課金として、仕事を作成しやすくする
- 「人探し」の価値があるサービスの無償提供で、アプローチ費用も無料とする
というモデルにしているのでは無いかと感じた。
どのようにニッチに始めていくのか
Facebookであればハーバード大学の学生間から、YouTubeであれば音楽専門サイトから、と世界中の大きなサービスも最初はニッチから入っている。今回のTaimee(タイミー)が対する人材領域はその市場規模こそ大きいけれど、圧倒的なレッドオーシャン。
その中で「どのようにニッチにしているか」というのは推し量ることしかできないが、恐らく「リアルで、スポットに、人が欲しい仕事」という、サービスサイト内の言葉を借りると、「単発業務」領域であると思われる。
実際にワーカー側でアプリを覗いて見ると、データ入力やビラ・チラシ配り、意外にもユーザーインタビュー系の仕事が並んでいた。
リアルな「単発業務」領域を皮切りに今後どのような展開を見せて行くのかは非常に楽しみ。特に、エンジニアリングやデザインは単発業務が難しい領域であるので、どういった展開をさせるのか・それともしないのか注視したい。
ネットワーク効果とバイラリティ
こういった労働力のシェアエコで起こりそうなネットワーク効果としては、「単発業務をやるなら」といったものか。クライアント(仕事)が増えれば増えるほど、ワーカーは選べる仕事が多くなるし、ワーカーが増えれば増えるほどクライアント(仕事)がワーカーへアプローチ、募集の集客効率がよくなりマーケットプレイスとしての価値が高まる。
また、バイラリティといった観点でもワーカー側はきっと大学生が多くなってくるので、友達紹介キャンペーンのような口コミ施策は設計次第で効きが良さそうに思える。
レーティング(レビュー)をどうするか
上記のネットワーク効果やバイラリティの話は、「満足」という体験が大前提となっている。ここでいう満足とは
- クライアント:スポットでワーカーがあつまり、期待値以上の働きぶりをしてくれた
- ワーカー:スポットで仕事が見つかり、お金をすぐに得ることができた
という体験だろう。
こういった体験を双方が培う上でポイントになってくるのがレーティング(レビュー)である。この点に関しては、利用規約内に以下のように明記されており、原則必須であるみたい。
クライアントは、本サービスを通じた業務委託契約においてワーカーが業務を遂行すべき日(以下「業務予定日」といいます)の後1週間以内に、レビューを行うものとします。
現在、仕事を眺めて見ると「定員」になってしまった仕事がたくさんで、状況的には需要過多。したがって、やはりいかにクライアント(仕事)を増やして行くかがポイントになってきそう。応援しています。
マーケットプレイスとは何か?制約条件付きの最大化問題を解く
マーケットプレイスとは何か?
「マーケットプレイス・ガイドブック」では、マーケットプレイスに共通する点として以下2つをあげている。
前者に関しては「集約による買い手の引き込み」、後者に関しては「単なる情報掲載サイトとの差異化」を示唆していると思うのだが、結局よく分からない。
ので、自分で考えると、需要者と供給者の両サイドのエンドユーザーが、各々の経済合理性に基づいて自由取引を行う場所がマーケットプレイスなのではないかと。
マーケットプレイスは「国作り」
個人的にはマーケットプレイスを立ち上げることは1つの国作りみたいなイメージを持っている。
みたいなイメージで、仮に供給者を「企業」、需要者を「家計」であるとしたら、政府は
といった施策を取るのではないかと思うし、一国経済における需給バランスは非常に大事で、基本的にはマイルドなインフレを志向するのだと思う。
したがって、マイルドな供給過多を誘導し、需要者の需要を冷え込ませない。供給過多である場合、供給者(企業)のマーケットプレイスでの体験は損なわれる(例:出品しても売れない、募集しても集まらない等)が、それを解消することこそが政府(運営事務局)の役割。
また、アリババのジャック・マー氏が「Eコマースで一番大事な指標」として言い切ったのは「出店者の幸福度」。GMV(GDP)ではなく、あくまでユーザー(国民)の幸福を目指すことこそが運営事務局(政府)の役割だとハッとさせられた。
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制約条件付きの最大化問題を解く
よく経済学は「制約条件付きの最大化問題」であると言われており、マーケットプレイスの運営もそうだと感じる。
需要者と供給者は絶えず各々の経済合理性に基づいて動き回り、条件がその時々で異なってくる。したがって、一度として同じ瞬間は無く、その時々で最大化への解は異なってくる。
だから非常に難しい。こんなにも経済学が発展した現代世界においても自国経済を完全にマネジメントできる国家は未だ存在し得ないのだし。だけど、その難しさが最高に面白いし、難しいからこそ解けた時は最高に面白そうだと感じる。
なるべくマーケットプレイスの自由度は高く
また、「制約条件」をたくさん付けることは、個人的にはマーケットプレイスで最もやってはいけないことな気がする。なぜなら、マーケッットプレイスは需要者と供給者の両サイドのエンドユーザーが、各々の経済合理性に基づいて自由取引を行う場所だから。
何を言いたいかというと、制約条件を付けると、エンドユーザーの経済合理性を損なう可能性がある。例えば、メルカリで出品者の品質を本当に高めるのであれば「出品者の本人確認を必須にする」等の制約条件を付けるとか。だけど、それをしないのは「出品時に本人確認が必須」というのは、出品者にとって経済合理性を損なうからで、運営事務局(政府)が介入すれば介入するほど、マーケットプレイスはスケールをしていかない。メルカリはこれに対してレーティングを徹底的にユーザーにやってもらうことで解消しているのではないか。
だけど、そうは言っても必ずやってくるのがスパム・ハックユーザーたち。彼らに対しては、運営事務局(政府)が断固とした態度を取る必要があり、治安維持をしていかないと、割れ窓理論的にマーケットプレイスがダメになっていくので、メンテナンスが必要。
マーケットプレイスのタイプ
「マーケットプレイス・ガイドブック」からの引用になってしまうものの、マーケットプレイスのタイプとして、以下のようなものが列挙されていた。
- オンデマンドマーケットプレイス(UBER)
- マネージドマーケットプレイス(Beepi)
- コミュニティ主導型マーケットプレイス(Etsy)
- Saas型マーケットプレイス(Opentable)
- 分散型マーケットプレイス(OpenBazaar)
個人的には、Saas型マーケットプレイス(Opentable)で、マーケットプレイスを見据えたソフトウェアの提供を、初期段階で需要者または供給者のいずれかのサイドに行う。どちらかのサイドをソフトウェアでロックインできたら、マーケットプレイスとして、片方のサイドを集める。
いわゆる、シングルプレイヤーモード呼ばれる手法で、何がいいかというと、
- Saas売上のおかげで最初からキャッシュがある
- 鶏と卵の問題を回避することができる
という感じで、後者に関しては以下のご興味あれば以下の記事でまとめているので、ご覧ください。