講義ノートマーケットプレイス・Clearを調査。「1:9:90」理論を活用
講義ノートマーケットプレイスとは
講義ノートマーケットプレイスとは講義ノートを売りたい人(売り手)と講義ノートを買いたい人(買い手)から成り立つマーケットプレイス。
「講義ノート自体の著作権は先生なり教授にあるのではないか?」という議論もありつつ、今回はあくまでビジネス面にだけフォーカスして調べてみた。
勉強ノートまとめアプリ・Clearとは
アルクテラス社が提供する講義ノートマーケットプレイス・Clear。ノート買い手視点では、Clearで「勉強ノートの閲覧」「勉強の質問」をすることができる。
ノートには「無料ノート」と「プレミアムノート」があり、後者を見るためには、ノート買い手が課金をする必要がある。
マネタイズのポイントは「プレミアムノート」
マネタイズのポイントとしては、以下の通り。
- プレミアムノートの見放題で480円/月
- プレミアムノートの購入120円/冊
また、「プレミアムノート」は認定ノート作家と呼ばれる、事務局が認定された人しか公開することができない。その認定基準や具体的なフィーについては明らかではなく、QAコーナーでも様々な議論が。
認定ノート作家って、どうやったらなれるんです - Clear
ノートの売り手にインセンティブはあるのか
ここまで簡単に調べてみると、ノートの売り手の中でも認定ノート作家ではない人(一般ノート作家)にとっては、わざわざClearでノートを公開するインセンティブがなさそうに思える。
そのため、気になることとしては以下の通り。
- 一般ノート作家はなぜノートを公開するのか
- どのようにして一般ノート作家を集めるのか
- なぜ、ノートの買い手にもっと課金をするような仕組みしないのか
一般ノート作家はなぜノートを公開するのか
先入観で「ノートを公開することは非常に面倒臭そう」だと思っていたが、基本的には写真を撮影するだけなので、非常に楽だった。したがって、公開のハードルはずっと低いので、そこまで手間ではないかも。
また、公開したノートに対しては「いいね」や「コメント」のリアクションがもらえるので、そういった「リアクションをもらえる嬉しさ > 公開の手間」といった構図だろうか。
そして、あわよくば認定ノート作家にもなれるので、 続ける人も多いのかもしれない。
どのようにして一般ノート作家を集めるのか
記事によるとボリュームゾーンは高校1年生(16歳)で、主に口コミで広がり2017年12月段階で160万ダウンロードを達成していたとのこと。
この講義ノートマーケットプレイスの場合、売り手=買い手と役割がオーバラップすることができるのは大きな特徴。つまり、「ノートの買い手は、売り手」にもなり、「ノートの売り手は、買い手」にもなる、ということ。
この構造には既視感がありMediumと非常に近しく、「1:9:90」の理論で考えているのではないか。
- 1:積極的に書いてくれる人(認定ノート作家)
- 9:ある程度書いてくれる人(一般ノート作家)
- 90:読むだけの人
したがって、Clearもノートを閲覧するだけなら無料なので、
- 90:読むだけの人=「無料で閲覧できるならダウンロードしてみよう」と思う
- 9:一般ノート作家=読むだけの人の中から一定割合で「自分も公開してみようかな」と思う一般ノート作家が現れる
- 1:認定ノート作家=そして、一般ノート作家の中から一定割合で認定ノート作家が現れる
という仕掛けになっており、事務局としては、無料閲覧でも全然OKなので「ノートの買い手から集める」ことが合理的になる。
なぜ、ノートの買い手にもっと課金をするような仕組みしないのか
ここまで調べてみたらノートの買い手にもっと課金をさせるような仕組みにしないことは自明で、
- 多くのノートを無料で閲覧できるようにすることでユーザーを集める
- その中から一定割合で、一般ノート作家・認定ノート作家を生み出す
必要があるから。
また、ユーザーのボリュームゾーンが高校1年生(16歳)であることを考えると、彼ら・彼女らにとっての480円・120円は非常に貴重なお金であり、現実的にそこからマネタイズをすることが難しかったのかも。
一般ノート作家のモチベーション維持が課題
気になる点としては、「一般ノート作家のモチベーション維持」という観点。
彼らのモチベーションは「いいね」や「コメント」の感情報酬。逆に言えば、そういったリアクションがもらえないとどんどん離脱してしまい、母数が少なくなるので、認定ノート作家も少なくなっていく。
そのため、膨大なノート(2017年12月時点で、20万冊・200万ページ)の中から自分のノートを見つけ出してもらうための工夫が運営としての頑張りどころ。だから、ノート公開時に「キーワードの設定」を激推ししているし、その他もテクノロジーを使っていそう。
なるべく閲覧側の閲覧行動を分散させることで、「いいね」や「コメント」を分散させ、一般ノート作家のモチベーション維持、ひいては継続率向上を狙っているのではないか。