私的マーケットプレイス研究所

マーケットプレイスビジネスについて学んだことを書き留める。

DMM Okanが需要過多でサービス終了?なぜなのかを調べてみる

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家事代行サービス・DMM Okanがサービス終了

先日、家事代行サービス・DMM Okanが「需要過多」を理由にサービスを終了したというニュースが話題になった。

サービス終了の家事代行「DMM Okan」 理由は「需要高すぎ」 - ITmedia NEWS

直感的には「需要過多」なのであれば、対策として、

  • 供給量を増やす
  • 価格を上げる

などの対策が考えられるのではないか。

サービス終了の詳細な理由として、

代行スタッフの供給が不足し、なかなかマッチングできない状況になっていた

 

参考:サービス終了の家事代行「DMM Okan」 理由は「需要高すぎ」 - ITmedia NEWS

とのことで、人材確保が課題であるのであれば、前者の「供給量を増やす」ということは、色々と模索したけど、難しいという話になる。

そこで、後者の「価格を上げる」という打ち手をなぜ打たなかったのかを考えてみる。

 

DMM Okanのビジネスモデルは?

調べてみる前にDMM Okanがどういったビジネスモデルなのか簡単に整理してみる。

  • 家事代行する提供者(供給者)と家事代行の依頼者(需要者)から成り立つマーケットプレイス
  • 依頼者(需要者)の利用料金は、3,600円/1.5時間(税込、交通費込み) ※1時間あたり2,400円
  • 提供者(供給者)の時給は1,680円〜1,920円 ※1.5時間あたり2,520円〜2,880円
  • したがって、DMM Okanは1回のトランザクション(1.5時間と仮定)で、約1,000円の粗利が入る(厳密では無いが)

そして、2017年3月31日時点のニュースによると、 

2016年12月に東京都限定でサービスを開始してから、20~30代の単身男性や共働き夫婦を中心に依頼数が5000件を突破

 

参考:家事代行「DMM Okan」(おかん)、主要都市に提供拡大 人気の依頼内容は…… - ITmedia NEWS

 なので、

  • 2016年12月〜2017年3月の4ヶ月で、粗利は500万円(5,000件×1,000円)
  • 1ヶ月あたり125万円の粗利(500万円÷4ヶ月)

という状況であったと推測できる。

幾ら何でも少なすぎる気はする。 仮に1回のトランザクションによる粗利が2倍の2,000円であったとしても、1ヶ月あたり250万円の粗利のビジネス。

 

なぜ「価格を上げる」という選択肢を取らなかったのか

需要過多である場合「価格の引き上げ」により需要を沈静化させ、供給と需要の均衡点へと収束させることができるはずなのに、なぜその選択肢を取らなかったのか。

もちろん、「需要過多でサービスを閉じる」というのは建前で、「サービス自体に深刻なトラブルがあった」という本音がある可能性もあるが、ここではその可能性は一旦置いておく。

 

価格を上げても、提供者(供給者)が増える見込みがなかった

価格を上げると、需給バランスが均衡し、行きすぎると供給過多となる。例えば、依頼者(需要者)の利用料金を2倍にしたら、

  • 依頼者(需要者)は減る
  • 提供者(供給者)の時給は上がる
  • 時給が高いので、提供者(供給者)が増える

という力学が働きそうなものである。

しかし、可能性として「提供者(供給者)への時給を上げても、提供者(供給者)が増える見込みが無い」ということが試算したら分かってしまった、という事態はありそう。つまり、提供者(供給者)がボトルネックとなってスケールしないということ。

 

続ければ続けるほど赤字または回収期間が長すぎ

その他の可能性としては、ユニットエコノミクス的な発想で、サービスを約1.5年続けてみて、未だにCPAがLTVを上回っておらず、続ければ続けるほど赤字を掘り続ける構造になっていた可能性。

しかし、「需要過多でサービス終了」と言っているので、そもそも費用をかけてさらに依頼者(需要者)を増やすのは合理的で無いので、CPA自体は安そう。

加えて、CPAが安いのならLTVの回収期間も自ずと短くなるので、この「続ければ続けるほど赤字または回収期間が長すぎ」の可能性は筋としては悪そう。

 

以上から

  • 直接的に、提供者(供給者)を増やすことが難しい
  • 経済原理を働かせて供給過多の誘導をしたとしても、提供者(供給者)を増やすことが難しいことが分かってしまった

ということで「供給量増加の打ち手がなく、スケールしない」ことが、やっぱりサービス終了の原因の可能性が高い。

また「供給量増加」と一口に言っても、「ある程度の品質担保の上で」という但し書きがついて回るので、完全にシェアリングエコノミーであると、その品質担保が難しかったのかも。

「じゃあ、派遣スタッフとかを使えばいいのでは?」という話になると、恐らく

  • 人件費が高騰する
  • 利用料を上げる
  • 競合(Casy等)との差別化ができなくなる

といった具合に、事業としての優位性を損ない、当初のコンセプトから大幅に逸れてしまう事態だったのかも。

 

この事例から学ぶものとしては、「マーケットプレイスにおける鶏と卵問題の解決策」の記事でも書いたように「難しい方から集める」という定石を、しっかりと踏むことか。

また、その集め方としてはシングルプレイヤーモード、今回であれば提供者(供給者)≒主婦に対する価値提供を行ってから、依頼者(需要者)と結びつけるマーケットプレイスを作る、という手順が良かったのか。

そう言った意味で「国内で主婦を囲っているところはどこか」を考えてみて、その会社がこういった家事代行サービスをローンチしたら、最初から提供者(供給者)の見立てが立った状態でスタートを切るので、結果は違ってきたかもしれない。