私的マーケットプレイス研究所

マーケットプレイスビジネスについて学んだことを書き留める。

農業系マーケットプレイスの事例とビジネスモデル、B2C・B2Bでポイントが異なる

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農業系マーケットプレイスとは

調べてみたところ、農業系マーケットプレイスなるものが世の中にはある。マーケットプレイスなので、どういったプレイヤーを結びつけているのかというと、B2CとB2Bがあった。

  • B2C:農家と個人消費
  • B2B:農家とレストラン・飲食店

以下で、どのような企業があるのかを調べてみたいと思う。

 

【B2C】農業系マーケットプレイス

農家と個人消費者を結びつけるマーケットプレイス

 

食べチョク

vivid garden社が運営する食べチョク「農家直送で新鮮野菜をお取り寄せ」という触れ込みで運営しており、「本当の意味での産地直送」つまり農家が収穫したその日に直送する。

また、ビジネスモデルとしては、明記は無かったものの記事によると、成約時に農家らから成約金額の20%を手数料としてもらう手数料モデル。

マーケットプレイスを大きくしていくにあたり、

  • ネットワークに参加してくれる農家をどのように増やしていくか
  • ネットワークに参加してくれる個人消費者をどのように増やしていくか

がポイント。

基本的にはシングルプレイヤーモード(単一サイドへの価値提供)で、既存のサービスを窺うに、どちらかというと消費者に寄っている印象。農業系マーケットプレイスであると、「消費者側を集めることが難しい」という示唆かもしれない。

食べチョク|農家直送・安心・新鮮な有機野菜のネット通販

 

The Food Assembly

フランス発のB2C農業系マーケットプレイス。欧州であると地産地消の機運が高く、そういった背景から生まれたサービスなので、日本とは少し違う。

サービスの流れとしては、

  • 50名以上の個人消費者たちが集まってAssembly(集会)を作り、集会所(地元の学校やコミュニティセンター)を決める
  • Assembly(集会)のリーダーを決める
  • リーダーが取引をしてくれる農家を探してくる
  • 農家は商品リストをオンラインで共有
  • Assembly(集会)に所属する個人消費者達が商品リストから商品を購入
  • Assembly(集会)全体で最低発注数を満たせば、実際集会所に配送される

といった感じで、個人消費者たちが超主体的に動いている。これは背景として「地産地消するべき!」という機運の高さから成せる技。マーケットプレイスとしても「個人消費者が主体的に動いてもらう」ということを決めており、鶏と卵問題を避けた上で運営ができそう。

また、「どのようにして主体的に個人消費者たちを動かすか」が事業上のポイントで、そのために以下のような仕掛けになっていると思う。

  • Assembly(集会)というコミュニティ性
  • Assembly(集会)のリーダーはお金をもらえる
  • 手数料は農家から受け取る

手数料に関しては、農家に対して成約金額の20%を手数料としてもらっており、うち10%がリーダーへ、残り10%が運営へ渡るとのこと。

したがって、Assembly(集会)のリーダーとしてはAssembly(集会)全体での成約金額を大きくするインセンティブが生まれ、Assembly(集会)をより良くしようとするし、その結果としてより良いコミュニティが生まれる、とかなり上手い仕組みなっている。

The Food Assembly

 

B2B】農業系マーケットプレイス

農家とレストラン・飲食店を結びつけるマーケットプレイス

 

SEND

プラネット・テーブルが運営するSENDは、農家とレストラン・飲食店との直接取引を可能とするマーケットプレイス

「産地から都市へ。都市から産地へ。 産地と都市の間にある食べ物と情報のギャップを解消する。」

 と言っており、The Food Assemblyが掲げているような「地産地消」の方向性とは真逆で面白い。

SENDというマーケットプレイスとは別にダイレクト商談・出荷取引管理プラットフォームである「seasons!」というソフトウェアも提供している。このソフトウェアを導入してもらうことで、農家またはレストラン・飲食店をロックインし、マーケットプレイスにも参加をさせようとしているのではないか。

またビジネスモデルとしては同じく手数料モデルで、記事によると成約金額の20%を農家からもらっているとのこと。 

SEND(センド) - 農業の未来を担う生産者支援・出荷プラットフォーム

 

美菜

最後に調べてみたのは、中国のB2B農業系マーケットプレイスの美菜。農家とレストラン・飲食店をつないでおり、レストラン・飲食店と言っても対象は「中小規模」であるとのこと。

なかなか中国の野菜流通網を推し量ることはできないが

  • 中間業者を排除することができる
  • そのために、コストを抑えることができる
  • 自社でサプライチェーンを構築・保有し、18時間以内に商品が届く

といった点がポイントになっていそう。

ビジネスモデルに関しては、恐らく農家から成約金額の手数料を●%もらうといった形だと思うが、中国語なので、解読できず。

美菜网-中国生鲜移动电商平台

 

B2Cなら個人消費者から、B2Bなら農家から

ここまでまとめてみて

  • B2Cなら、個人消費者を集めることが難しいので、個人消費者に対する価値提供
  • B2Bなら、農家を集めることが難しいので、農家に対する価値提供

だと思った。

個人消費者に対する価値提供は、食べチョクであれば「コンシェルジュ」、The Assembly Tableであれば「Assembly(集会)というコミュニティやお金」。

農家に対する価値提供はプラネット・テーブルであれば「ダイレクト商談・出荷取引管理ができるソフトウェア」。

また、手数料は20%のところが多く、「20%」という料率設計に関しても今度深く調査をしてみたいと思う。