私的マーケットプレイス研究所

マーケットプレイスビジネスについて学んだことを書き留める。

バイラリティを引き起こすには?その種類と具体的な事例5つ

f:id:kokkokoou:20180805022308j:plain

バイラリティとネットワーク効果の違い

バイラリティの話が出ると、よく混同されがちなネットワーク効果。バイラリティはネットワーク効果の必要条件であるかもしれないが、十分条件ではないということ。

Andreessen Horowitzの資料によると、バイラリティとネットワーク効果の違いとして、以下のように説明されている。

 つまり、ネットワーク効果は「ネットワークに参加者が増えれば増えるほど、ネットワークの利便性が高まる」という価値そのものの話をしており、バイラリティはそのネットワークへの参加者を増やす際のスピードの話をしている。

 

バイラリティには2種類ある

バイラリティとネットワーク効果の違いを理解したところで、バイラリティには以下の2種類ある。

  • Product Virality
  • Traditional Virality

それぞれについて、上記と同じくAndreessen Horowitzの資料を参考にサマリしてみる。

 

Product Virality

プロダクトそのものにバイラル要素が含んでいること。代表例としてはFacebook。友達が友達を呼ぶことで、指数関数的にユーザーが増える。

またこの類のプロダクトであり場合、バイラリティが起きると、ネットワーク効果が起きる。つまり、Facebookに登録する友達が増えれば増えるほど、Facebookの利便性が上がる(フィードコンテンツが充実する)のである。

 

Traditional Virality

プロダクトそのものにバイラル要素が含まれていないが、口コミなどによって生じさせることができるバイラリティ。インセンティブプログラム・他マーケットプレイス相乗り・埋め込み可能の3つがある。

 

Traditional Viralityの3種類

インセンティブプログラム・他マーケットプレイス相乗り・埋め込み可能の3つについてサマリする。

 

インセンティブプログラム

口コミや紹介をしてくれたユーザーに対してインセンティブを与えることで、バイラリティを起こす手法。

 

UBER

「友達を紹介すると、友達が無料乗車できて、あなたの無料乗車できる」的なインセンティブプログラムをやってる。

無料乗車をゲットする | Uber

 

Evernote

「友達を紹介してくれたら、Evenoteポイントプレゼント!」的なインセンティブキャンペーン。Evenoteポイントを集めてプランをアップグレードすることができる。

 

マーケットプレイス相乗り

マーケットプレイスへ相乗りし、強者の力を借りることでバイラリティを起こす手法。

 

Airbnb

Airbnbのホストのアコモデーションを、Craigslistに簡単に投稿できるようにした。CraigslistでAirbnbの物件を見つけると、ゲストはAirbnbにも登録しないといけないので、Airbnbは無料で集客ができた。

 

Instagram

Instagramに投稿することで、SNS連携でFacebookTwitterFoursquareなどにも写真を投稿できるようにした。当時、Instagramの写真フィルタは画期的で、「綺麗!」と興味を引かれたユーザーは自ずとInstagramに誘導された。

 

埋め込み可能

他サイトへの埋め込みハードルを容易にし、バイラリティを起こす手法。

 

YouTube

初期のYouTube は音楽・バンド系のニッチなサイトへの攻略から始めた。その際に、自分の楽曲をシェアする際に課題があったとのこと。そこで、簡単な埋め込みコードを発行できるようにして、他サイトにYouTubeがどんどん埋め込まれていった。

 

バイラリティのメリット・十分条件・必要条件

何と言っても投資対効果が良い。CPAは安いし、LTVも 高くなる傾向がある。そのため、バイラリティをいかに科学的に起こすことができるかは非常に大事。

だけど、このバイラリティ自体は、本質的には「他人への紹介」なので、「プロダクト自体が紹介されるに値するのか」といった観点からはやはり逃れることができないので、十分条件であると言える。

また、必要条件としては、インセンティブプログラムの場合、インセンティブが「サービスの利便性を向上させるものになっていること」は大事。例えば、UBERであれば、インセンティブは無料乗車だし、Evernoteであればプランのアップグレード。

言うは易し行うは難し、プロダクトの磨き込みが第一歩。

 

DMM Okanが需要過多でサービス終了?なぜなのかを調べてみる

f:id:kokkokoou:20180804021539j:plain

家事代行サービス・DMM Okanがサービス終了

先日、家事代行サービス・DMM Okanが「需要過多」を理由にサービスを終了したというニュースが話題になった。

サービス終了の家事代行「DMM Okan」 理由は「需要高すぎ」 - ITmedia NEWS

直感的には「需要過多」なのであれば、対策として、

  • 供給量を増やす
  • 価格を上げる

などの対策が考えられるのではないか。

サービス終了の詳細な理由として、

代行スタッフの供給が不足し、なかなかマッチングできない状況になっていた

 

参考:サービス終了の家事代行「DMM Okan」 理由は「需要高すぎ」 - ITmedia NEWS

とのことで、人材確保が課題であるのであれば、前者の「供給量を増やす」ということは、色々と模索したけど、難しいという話になる。

そこで、後者の「価格を上げる」という打ち手をなぜ打たなかったのかを考えてみる。

 

DMM Okanのビジネスモデルは?

調べてみる前にDMM Okanがどういったビジネスモデルなのか簡単に整理してみる。

  • 家事代行する提供者(供給者)と家事代行の依頼者(需要者)から成り立つマーケットプレイス
  • 依頼者(需要者)の利用料金は、3,600円/1.5時間(税込、交通費込み) ※1時間あたり2,400円
  • 提供者(供給者)の時給は1,680円〜1,920円 ※1.5時間あたり2,520円〜2,880円
  • したがって、DMM Okanは1回のトランザクション(1.5時間と仮定)で、約1,000円の粗利が入る(厳密では無いが)

そして、2017年3月31日時点のニュースによると、 

2016年12月に東京都限定でサービスを開始してから、20~30代の単身男性や共働き夫婦を中心に依頼数が5000件を突破

 

参考:家事代行「DMM Okan」(おかん)、主要都市に提供拡大 人気の依頼内容は…… - ITmedia NEWS

 なので、

  • 2016年12月〜2017年3月の4ヶ月で、粗利は500万円(5,000件×1,000円)
  • 1ヶ月あたり125万円の粗利(500万円÷4ヶ月)

という状況であったと推測できる。

幾ら何でも少なすぎる気はする。 仮に1回のトランザクションによる粗利が2倍の2,000円であったとしても、1ヶ月あたり250万円の粗利のビジネス。

 

なぜ「価格を上げる」という選択肢を取らなかったのか

需要過多である場合「価格の引き上げ」により需要を沈静化させ、供給と需要の均衡点へと収束させることができるはずなのに、なぜその選択肢を取らなかったのか。

もちろん、「需要過多でサービスを閉じる」というのは建前で、「サービス自体に深刻なトラブルがあった」という本音がある可能性もあるが、ここではその可能性は一旦置いておく。

 

価格を上げても、提供者(供給者)が増える見込みがなかった

価格を上げると、需給バランスが均衡し、行きすぎると供給過多となる。例えば、依頼者(需要者)の利用料金を2倍にしたら、

  • 依頼者(需要者)は減る
  • 提供者(供給者)の時給は上がる
  • 時給が高いので、提供者(供給者)が増える

という力学が働きそうなものである。

しかし、可能性として「提供者(供給者)への時給を上げても、提供者(供給者)が増える見込みが無い」ということが試算したら分かってしまった、という事態はありそう。つまり、提供者(供給者)がボトルネックとなってスケールしないということ。

 

続ければ続けるほど赤字または回収期間が長すぎ

その他の可能性としては、ユニットエコノミクス的な発想で、サービスを約1.5年続けてみて、未だにCPAがLTVを上回っておらず、続ければ続けるほど赤字を掘り続ける構造になっていた可能性。

しかし、「需要過多でサービス終了」と言っているので、そもそも費用をかけてさらに依頼者(需要者)を増やすのは合理的で無いので、CPA自体は安そう。

加えて、CPAが安いのならLTVの回収期間も自ずと短くなるので、この「続ければ続けるほど赤字または回収期間が長すぎ」の可能性は筋としては悪そう。

 

以上から

  • 直接的に、提供者(供給者)を増やすことが難しい
  • 経済原理を働かせて供給過多の誘導をしたとしても、提供者(供給者)を増やすことが難しいことが分かってしまった

ということで「供給量増加の打ち手がなく、スケールしない」ことが、やっぱりサービス終了の原因の可能性が高い。

また「供給量増加」と一口に言っても、「ある程度の品質担保の上で」という但し書きがついて回るので、完全にシェアリングエコノミーであると、その品質担保が難しかったのかも。

「じゃあ、派遣スタッフとかを使えばいいのでは?」という話になると、恐らく

  • 人件費が高騰する
  • 利用料を上げる
  • 競合(Casy等)との差別化ができなくなる

といった具合に、事業としての優位性を損ない、当初のコンセプトから大幅に逸れてしまう事態だったのかも。

 

この事例から学ぶものとしては、「マーケットプレイスにおける鶏と卵問題の解決策」の記事でも書いたように「難しい方から集める」という定石を、しっかりと踏むことか。

また、その集め方としてはシングルプレイヤーモード、今回であれば提供者(供給者)≒主婦に対する価値提供を行ってから、依頼者(需要者)と結びつけるマーケットプレイスを作る、という手順が良かったのか。

そう言った意味で「国内で主婦を囲っているところはどこか」を考えてみて、その会社がこういった家事代行サービスをローンチしたら、最初から提供者(供給者)の見立てが立った状態でスタートを切るので、結果は違ってきたかもしれない。

マーケットプレイスが生み出す外部経済と外部不経済とは何か

f:id:kokkokoou:20180803201148j:plain

そもそも外部経済と外部不経済とは何か

市場(マーケットプレイス)の外部に及ぼす間接的な波及効果のことであり、それが良いものなら「外部経済」、悪いものなら「外部不経済」ということ。

例えば、ある街に「駅」が出来たとする。駅自体の直接的な効果は

  • 乗客人数の増加により稼げる運賃が増える(経済効果)

一方で、間接的な波及効果としては、駅ができたことで

  • 「駅周辺の商店街が栄える」という良い波及効果(外部経済)
  • 「人が増えたことで、騒がしい」という悪い波及効果(外部不経済

が考えられる。

 

メルカリが生み出す外部経済

まず、メルカリが生み出した外部経済について。メルカリ自体はフリマのマーケットプレイスであり、トランザクションから手数料モデルで収益を上げており、それ自体はメルカリの経済効果である。

では、メルカリの外部経済(良い波及効果)は何かと言うと、「梱包資材」「郵便局」等への外部経済。メルカリの自社調査「フリマアプリ利用者における消費行動の変化」に関する実態・意識調査によると、なんと周辺サービス業界に最大752億円のインパクトを与えているとのこと。

f:id:kokkokoou:20180803200851g:plain

参考:

「フリマアプリ利用者における消費行動の変化」に関する実態・意識調査 | 株式会社メルカリ

メルカリ自体が意図せず起こしたわけでは無いけど、メルカリというマーケットプレイスの外側の市場で良い波及効果が生まれた好例であると言える。

 

UBERLyftが生み出した外部不経済

上記のメルカリのような外部経済の事例がある一方で、その反対である外部不経済の事例も存在する。 

 現在、アメリカの都市部ではUBERLyftと言ったライドシェアサービスが普及しており、「空車ばかりなのに、街は車だらけ」といった状態になってしまっている。その結果として、街に渋滞が起きてしまっている。

これはまさに外部不経済の事例で、UBERLyftといったライドシェアのマーケットプレイスでは、ドライバー(売り手)と乗客(買い手)が存在し、マーケットプレイス内部に限った話であれば、

  • ドライバー(売り手)が多ければ多いほど、乗客(買い手)は待ち時間が少なくて済む
  • 乗客(買い手)が多ければ多いほど、ドライバー(売り手)はダウンタイムに稼ぐことができる

とまさに良いことづくめである。

しかし、UBERLyftといったマーケットプレイスから視点を広げて、街(いわゆる世の中)に目を向けて見ると、渋滞という悪い波及効果(外部不経済)を起こしてしまっていた。

ちなみに、ニューヨークでは既にライドシェアサービスの規制に向けた動きが始まっているとのことで、UBERLyftがどういった対応を取るのか注目ポイント。

“「ライドシェア」増えすぎで渋滞” NYで規制へ | NHKニュース

 

外部経済と外部不経済の前にマーケットプレイスの成長

外部経済と外部不経済について書いたものの、「外部」の市場にまで影響を与えることができるような マーケットプレイスをまずは作ることが大事。

マーケットプレイスにおいては「Winner takes all」と勝者が利益を総取りしていく。そして、その総取りのために必要なファクターとして度々上がるのが「ネットワーク効果」。どこかのタイミングで、ネットワーク効果についてまとめてみる。