私的マーケットプレイス研究所

マーケットプレイスビジネスについて学んだことを書き留める。

マーケットプレイスにおけるユーザースパム・ハックにどのように対応するべきか

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マーケットプレイスにおけるユーザースパム・ハックとは

マーケットプレイスである場合、往往にしてユーザースパムやユーザーへのハックがなされる。

仮に、Googleをパブリッシャー(情報供給者)と検索者(情報需要者)のマーケットプレイスであるとすると、パブリッシャー(情報供給者)は、(一昔前であると)ペイドリンクやクローキング、ワードサラダ等の所謂ブラックハットSEOがユーザースパム・ハックに該当する。

このように、マーケットプレイスを私利私欲のために悪用しようとするユーザーに対して、どのような対応をしていくべきなのか。

 

ユーザースパム・ハックへの対応事例

世界的なマーケットプレイスやその他日本のマーケットプレイスの企業がどのような形でユーザーからスパムやハックを受け、どのように対応しているのか。

 

Googleの事例

上記の通り、Googleをパブリッシャー(情報供給者)と検索者(情報需要者)のマーケットプレイスであるとする。

Googleの肝はアルゴリズムであり、初期段階では「被リンク」が重要なシグナルだった。そこで、 パブリッシャー(情報供給者)達はアルゴリズムをハックし、ペイドリンクやサテライトサイトからのリンクをIP分散をするなどして、自身のページを強引に検索上位へと押し上げる事態が発生。そのため、初期のGoogleはその検索結果画面が、全く関係が無いKWDでもアダルトサイトで溢れていたそう。

そこで、講じられた対策としては「パンダアップデート(2011年)」「ペンギンアップデート(2012年)」であり、今ではショット的な「アップデート」ではなく、定常的な「アルゴリズム」に盛り込まれている。

この結果として、以前よりもブラックハットSEOのようなスパムやハックが通用しなくなった。加えて、アルゴリズムが日々変化するのでもはやアルゴリズムをハックすることが不可能になった。

Googleの収入源は検索エンジンリスティング広告であるため、彼らにとっては「いかにGoogleで検索をしてもらえるか」がビジネス的に重要。そういった背景から、ここまで力をかけてユーザーのスパム・ハックを撲滅しようとしている。

 

Amazonの事例

 Amazonは、マーケットプレイスの代表格で、売り手と買い手から成り立っているマーケットプレイス

どのようなユーザースパム・ハックが横行しているのかというと「Amazonレビューの星の操作」「SNSでのレビューの取引」など、レビュー関連が多い。

これらのスパムは2018年8月現在も横行しており、もちろん利用規約で縛ってはいるものの有効打になっていない印象がある。

「悪貨は良貨を駆逐する」という言葉の通り、こういったレビュースパムは全体から比較したら小さいものであるものの、「小さい」ということが問題なのではなく、「存在すること」が問題。マーケットプレイスにおいては「評価」は信用の定量的な物差しであり、その物差し自体が信用を失い、機能不全になってしまうのではないか。

 

はてなの事例

はてなは、 書き手(コンテンツ提供者)と読み手(コンテンツ需要者)のマーケットプレイスである。

はてなでのユーザースパムと言えばやはり「はてブスパム」ではないだろうか。はてブスパムは、はてなブックマークの「新着記事入り」「人気記事入り」を目的として、身内でコンテンツにはてブを付け合うことであり、身内だけではなく、SNS上では売買も行われている。

このはてブスパムが横行すると、以下のような事象が起こる。

  • はてブの人気記事、新着記事の品質が落ちる
  • MAUなりDAUなりが低下する
  • 広告枠が売れなくなってしまう

はてブは広告枠で商売をしてるため、はてなはてブに並ぶ記事の品質を担保するインセンティブがある。

そこで、はてなとしては以下のように、スパムユーザーに対しては「表示停止措置」「利用停止措置」などの強い態度に出ており、通報機能やスパム判定のシステムを構築している。

はてなブックマークにおける現状でのスパム対策について - はてなブックマーク開発ブログ

 

真摯に対応を続けること

マーケットプレイスではユーザーからのスパム・ハックを受けやすい。

本来的にはスパム・ハックするユーザーが悪いはずなのに、一般的なユーザーからしたらそんなことは関係無く、その場を提供している企業、つまりマーケットプレイスに対して怒りの矛先が向けられる。例えば、Amazonの例であれば、ごく少数のレビュー操作をする人が本来的には悪いはずなのに、「Amazonのレビューは信用ならない」と主語がAmazonにすり替わっている。

もちろん、これに対して積極的な解決を目指さないことも1つではあるが、基本的には解決をする、または解決をしようとしている姿勢を見せるしか無いのではないか。なぜなら、理由はなんであれユーザーが離れていってしまうので。

したがって、マーケットプレイスである以上は

  • ユーザーはスパム・ハックを仕掛けてくるものである
  • そのスパム・ハックに対して真摯に対応をする
  • そして、「対応している」ということをしっかりと伝える

といったことが大事になってくる。

また、「対応」と言っても、全ての会社がGoogleのようなテクノロジーを持っているわけでは無いので、難易度が非常に高い。

したがって、工数はかかってしまうものの、

と、人の手を介在させることが基本的には必要であると思われる。ちなみに、Twitterは1日になんと100万以上のアカウントをバンしているみたい。

Twitterが1日100万超の偽アカウントを使用停止に 偽情報の拡散防止策 - ライブドアニュース

 

緊急性が低いけど、重要性が高いユーザースパム・ハックへの対応。長期的に見たら、間違いなく大事だと思うので、しっかりと戦略に乗せて、短期的には手動運用も辞さずに根気強くやっていった方がいいと思います。

マーケットプレイスにおける鶏と卵問題の解決策

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マーケットプレイスにおける鶏と卵問題とは

供給者がいるから、需要者が集まるのか。需要者がいるから供給者が集まるのか。Amazonなら、商品がたくさんあるから、買い手が集まるのか・買い手がたくさんいるから、商品が集まるのか。

英語でもまんまChiken egg problemと表現されており、マーケットプレイスを始める際にはポイントになる部分。

 

鶏と卵問題の解決策とは

鶏と卵問題の解決策を調べるにあたり参考になったのは以下2つのコンテンツ。

実際に読んでみると、鶏と卵問題を解決するというよりは避けるために以下のような方法が紹介されている。

 

ボーリングのピン戦略

ボーリングのように、1本のピンを頂点に残り9本のピンが三角形を成していて、最初のステップは「頂点であるピンを1本倒そう」ということで、換言すると「ニッチを狙え」ということ。なぜ「ニッチを狙え」というのかと言うと、競合が少ないので、独占がしやすいし、供給者と需要者の両サイドを比較的容易に集めることができるため。

具体例としてはFacebookが上がっており、Facebookの場合、最初は「ハーバード大学の名簿作成」から始まったとのこと。その他にもAmazonも最初はいきなり今のように幅広いカテゴリを扱っていたわけではなく、本だけを扱っていた。

したがって、Facebookにとっての最初のピンはハーバード大学生、Amazonにとっての最初のピンは本だった。

 

シングルプレイヤーモード

英語でSingle Player Modeと書いてあったので、直訳。うまく日本語に訳せないものの、意味としては「単一サイドの顧客への価値提供で完結すること」的な意味だと思う。

シングルプレイヤーモードの例として上がっていたのはOpentableで、ざっくりアメリカの食べログで、レストンランと食事をしたい人向けのマーケットプレイス

Opentableの場合、いきなりマーケットプレイスを開いたのではなく、まずはレストランに対してソフトウェア(電子予約台帳)を提供していたとのこと。そうすることで、レストラン側(売り手)をまずは集め、そのあとに食事をしたい人(買い手)を集め、鶏と卵問題を回避。

 

買い手=売り手

買い手が売り手であり、売り手が買い手である、といった具合に役割がオーバーラップする形。これであれば、1人2役担うので、鶏と卵問題がそもそも発生しなくなる。

日本で言えば、メルカリがまさにそうで、ある時は出品者・ある時は購入者となっており、オーバーラップしている。

アメリカだと衣料品マーケットプレイスposhmarkは買い手と売り手が見事にオーバーラップしているみたいであり、メルカリの例と合わせて考えると、C2Cのような形で比較的な安価なトランザクションである場合、オーバーラップが起きやすいのか。

 

難しい方から集める

解決策とは少し違うものの、「難しい方から集める」ことが定石とのこと。例としてバーが上がっていて、バーというのは男性と女性のマーケットプレイス。どちらが集めるのが難しいかというと女性で、だから女性の方が価格が安かったりするみたいで、「そのような経済合理性が働いていたなんて!」と個人的には目から鱗

 

シングルプレイヤーモードが最も効率的

以上3つの中でもシングルプレイヤーモードがおすすめの戦略らしく、理由としてはその資本効率にあるとのこと。

シングルプレイヤーモードで例示したOpentableはソフトウェアの提供を月額のサブスクリプションで行なっており、そこからキャッシュを生んでいた。また、そのソフトウェアがレストランにとって、もはやインフラになっていたために、ロックイン効果がしっかりと働いた。

したがって、シングルプレイヤーモードとすることで、「ソフトウェアの提供だけでキャッシュが生めている」「必要不可欠なソフトウェアになっていればロックイン効果が効いている」から資本効率が良い。

 

ソフトウェアだけならコモディティに過ぎない

アメリカのユニオン・スクエア・ベンチャーズ(USV)のフレッド・ウィルソン氏曰く「ソフトウェアだけなら、コモディティに過ぎない」とのことで、最初は先進的なソフトウェアであっても時間の経過とともに、競合が増える、価格競争が増える等によりコモディティに成り下がってしまい、結果的に持続性が無くなってしまう。

したがって、シングルプレイヤーモードが良いらしい!と言っても、最初に提供するソフトウェアは将来的に作りたいマーケットプレイスを頭に描きながら、集めるべきユーザーに対して、前段階としてソフトウェアの提供を行う、という意識が大事ということなのか。

 

マーケットプレイスにおける鶏と卵の問題についてまとめてみましたが、詳細を知りたい方は原文(英語)をご覧ください。また、上記で誤りや、他の良い情報ソースがあればぜひ教えてください!

 

※その他にも以下のような記事を読んだけど、いまいちよく分かりませんでした。 

Six strategies for overcoming “chicken and egg” problems – cdixon blog